2000年前後に導入されたERP(基幹系業務パッケージ)SAP R/3のサポート切れが2025年に迫っている。多くの会社が導入して、カスタマイズやアドオンをしまくったせいで今になってバージョンアップが簡単にできずリスクになってしまっている。
結局原因はいつもの通り。人である。
ERPの導入を推進するのは、多くの場合、情報システム部というバックオフィスの部署である。営業とか製造部門からはコストセンターと言われて力関係で完全に負けている部署である。
そんないじめられっ子の部署が面倒な海外製のソフトを会社の基幹業務に使用したいとか言ったらどうなるか?(実は情報システム部は導入したい訳じゃなく、コンサルとかトップダウンで導入を決められたのに従っているだけというのが実際のトコロな訳だが)
そんな機能じゃ、俺たちの業務はまわらない。
の大合唱である。
そこで情報システム部はけなげにERPをカスタマイズしまくって、ご機嫌を伺う。結果、簡単にバージョンアップできないようなゲテモノができあがる。
でまた情報システム部が困る。
マッチポンプである。
ERPはカスタマイズしない。バージョンアップの時大変だし、そもそもパッケージソフトを使うというコトは、「世界標準のソフトの方に自分たちの仕事を合わせること」である。
というのは20年前から言われていたことである。当時、情報システム部の人間は誰でも知っていた。日経コンピュータにも書かれていた。
だがこの有様である。この問題は企業の情報システムにまつわる問題点の代表である。(日本の問題の多くも同じ原因)
対決や揉め事を極端に嫌うのてある。
そんな機能じゃ、俺たちの業務はまわらない。
という声に対して
うるせー。将来もっと困ることになる。自分たちだけのことじゃなく、会社全体のことを考えて業務の方を変えろ。
と対決、揉め事を起こしていれば事態はもう少しマシになっていた。
揉め事がおこれば上位の裁定者が互いの言い分やメリット・デメリットから意思決定できる。そして誰かが意思決定したことが残る。もし意思決定が誤っていたのなら反省して繰り返さないようにすれば良い。だが、対決や揉め事が起きず、和を以て尊しとするとどうなるか? 間違いが間違いとして残らず反省や改善ができなくなってしまうのだ。だから今回なんらかの方法で頑張ってERPをバージョンアップ対応させても結局、次のバージョンで同じ問題が起きる。
特に情報システムの人間は「和を以て尊しとする」ことの弊害を真剣に考えなければならない。